公認心理師の医療機関での仕事と実際|病院で活躍するために必要なこと


公認心理師が患者と面談している様子

医療の現場で働く心理師は、精神科や心療内科、総合病院など多様な領域で、患者の心の健康を支える重要な役割を担っています。近年では、公認心理師の国家資格化により、医療現場における心理師の存在感はこれまで以上に高まり、求められる専門性も幅広くなっています。本記事では、医療機関で働く心理師の具体的な仕事内容、必要なスキルまでを詳しく解説します。

医療機関で働く心理師の主な役割

医療現場での心理師の仕事は、「カウンセリング」「心理検査」「多職種連携」の3つを柱として展開されます。精神科や心療内科を中心に、総合病院の精神科リエゾンチームや緩和ケア領域など、活躍の場は拡大しています。

カウンセリング(心理療法)

心理師の中心となる仕事が患者とのカウンセリングです。医師の診断や治療方針に基づき、患者の心理状態に合わせた面接を行います。

うつ病や不安障害、適応障害などの症状を抱える患者に対して、認知行動療法(CBT)や支持的心理療法、対人関係療法などを状況に応じて使い分けます。

患者の病状や治療段階により、心理師のアプローチも変化するため、医学的知識と心理学的知識の両方が求められます。

心理検査

医療機関では、心理検査が診断の一助として非常に重要です。代表的な検査には、WAIS・WISCなどの知能検査、ロールシャッハテスト、バウムテスト、P-Fスタディなどの投影法検査、抑うつ・不安尺度などの質問紙があります。

心理師は検査の実施だけでなく、結果の分析、所見の作成、医師への報告なども行います。検査結果は、診断や治療方針の決定に大きく関わるため、専門性と正確性が特に重視される業務です。

多職種連携

医療現場で心理師が欠かせない理由のひとつが、多職種連携の中で活躍する点です。実際の現場では、医師(精神科医・心療内科医)、看護師、精神保健福祉士(PSW)、作業療法士(OT)、ケースワーカー、栄養士などと密に連携し、チーム医療として患者を支えます。

ケースカンファレンスでは、患者の状態変化や治療方針の調整、退院支援、家族支援などについて話し合いが行われ、心理師はその中で心理面から見た重要な観点を提供します。

医療機関の種類別:心理師の働き方の特徴

精神科・心療内科

精神疾患を抱える患者と接する機会が最も多い領域です。

気分障害、統合失調症、パニック障害、摂食障害など幅広い症例が来院します。

初診時のアセスメント、継続面接、心理教育、家族支援など多岐にわたる支援が必要となり、疾患理解や精神医学の知識が重要になります。

総合病院

身体疾患を抱える患者の心理支援を担当することもあります。

がん、糖尿病、心疾患などを抱え、心理的ストレスや適応困難が生じている患者が対象となります。

精神科リエゾンチームに所属し、身体科の医師や看護師と連携しながら、患者の心理ケアを行います。

緩和ケア領域では、患者自身だけでなく家族への心理的サポートも重要です。

医療機関で求められる心理師のスキル

医療現場では、単に心理学の知識だけでは不十分で、以下の能力が特に重要とされています。

医学的知識

精神医学・身体疾患・薬物治療などの理解は必須です。

患者の状態を正確にアセスメントするためには、医学的背景を踏まえた見立てが欠かせません

面接技法・心理療法スキル

認知行動療法、支持的心理療法、動機づけ面接など、複数の技法を柔軟に使い分ける応用力が求められます。

心理検査の専門性

検査の選択・実施・解釈・所見作成において専門性が必要です。

医師の診断に影響するため、正確な判断力が欠かせません

多職種とのコミュニケーション能力

患者の治療はチームで進めるため、情報共有・協力体制を築く能力が極めて重要です。

記録・文書作成スキル

医療機関では詳細な記録が必須であり、正確で分かりやすい文章力が求められます。

医療機関で働く心理師というキャリア

医療機関で働くことは、心理職として高い専門性を身につける貴重な機会です。症例の幅も広く、心理検査や面接技法を深く学べる環境が整っているため、臨床家として確かな力を育てる場として最適です。

一方、重症患者と向き合う精神的な負担や、書類業務の多さ、多職種との協働の難しさなど、現場ならではの課題も存在します。それでも、多くの心理師が医療の現場で「人の心に寄り添うやりがい」を実感しながら働いています。

医療領域で働きたいと考える学生や受験生にとって、医療機関での心理師の仕事を理解することは、自分の将来像を描く大きな助けになるでしょう。



監修者

【公認心理師】新田 猪三彦(にった いさひこ)

2007年より心理学や脳科学の講座を行い、医歯薬専門予備校で受験に必要なメンタルの強化法、保育士会調査研究委員会において「保育士・保護者のコミュニケーション講座」、市民と協働によるまちづくり提案事業、産学官包括連携事業などを行っている。
九州朝日放送運営のマイベストプロ福岡でコラムの執筆にも携わり、一人でも多くの人が心が豊かに生活できるように情報を発信している。
また、部活動のメンタルトレーニング、学校を中退した学生の受験・学習支援、受験を見守る保護者の相談、資格試験合格のためのモチベーション管理、タイプ別による学習法のアドバイスなども行っている。
<略歴>
公認心理師 /ふくおか成年後見センターさくら / 福岡コミュニケーションカレッジ講師 / PMD医歯薬専門予備校心理カウンセラー / 日本心理学会認定心理士 / 日本メンタルヘルス協会認定基礎心理カウンセラー / 文部科学省所管生涯学習開発財団(神経言語プログラミング)協会認定マスタープラクティショナー / ICA(国際コーチ協会)認定コーチ / カナダSuccess Strategies・Shelle Rose Charvet認定LABプロファイリング・プラクティショナー
・LINEトークCAREカウンセラー
・メンタルゼミ