第9回公認心理師試験総評

第9回公認心理師試験では、心理職として必要な基本的な知識だけでなく、心理師が働く領域で必要な幅広い知識を問う問題が多くあり、難しいと感じた受験生も多かったのではないでしょうか。生徒からは「正解を確信できる問題が少なく、2〜3 択で悩まされる問題が多かった」、「医療分野の知識を細かくて、覚えていないと難しい」というような感想が聞かれました。
かつての公認心理師試験の問題では、常識で解答することができた事例問題やアセスメント・傾聴という視点で考える事例問題も多くありましたが、第9回公認心理師試験では、病態の理解や心理検査の知識を中心に考える事例問題が増えたような印象がありました。
心理学の知識、専門職としての知識が問われることが多く、正解の選択肢を選ぶときに迷った受験生も多かったのではないかと思います。この記事では、第9回公認心理師試験問題の傾向を分析し、今後の試験対策を考えていきます。 まずは、これから公認心理師試験を受ける人に向けて、公認心理師試験の概要から説明していきます。
公認心理師試験の概要
試験日
3月上旬頃
※第7回公認心理師試験から日程が3月上旬
試験時間
午前の部(10:00〜12:00)・午後の部(13:30〜15:30)
試験形式
全問マーク式
問題数
午前の部
一般問題(58 題)/事例問題(19 題)/合計(77 題)
午前の部
一般問題(58 題)/事例問題(19 題)/合計(77 題)
午前・午後の合計
一般問題(116 題)/事例問題(38 題)/合計(154 題)
配点
一般問題(各1点)/問題数(116題)/合計得点(116点)
事例問題(各3点)/問題数(38題)/合計得点(114点) 総得点(230点)
合格基準
総得点(230点)の60%程度以上を基準とし、問題の難易度で補正するという考え方を基に決定
※例年、138/230(60%)になることが多いですが、第4回公認心理師試験は143/230(62%)、第5回公認心理師試験は135/230(59%)、第8回公認心理師試験は134/230(58%)でした。
試験地
東京都 大阪府
※第1回〜第5回公認心理師試験までは7都道府県〜11都道府県で実施されていましたが、第6回公認心理師試験からは東京都と大阪府のみになっているので、地方受験者は注意が必要です。
第9回公認心理師試験の傾向
心理学の基礎知識に関する問題
〖出題例〗
認知心理学
正しい答えを出せるように決められた方法や手順を表す概念を選ぶ問題
認知療法
クライアントの問題が生じる状況、その状況における自動思考、感情、行動などの関連について総合的なアセスメントを表す用語を選ぶ問題
家族療法
セラピストが個々の家族成員の味方になり、その思いを認め、公平に接することを表す用語を選ぶ問題
J.Bowlby が示したアタッチメント
アタッチメントの発達段階において、第2段階に当たる子どもの行動例を選ぶ問題
森田療法
森田療法の技法として適切なものを選ぶ問題
教育分野に関する問題
〖出題例〗
不登校
不登校の児童生徒の実態に配慮し、特別の教育課程を編成して教育を実施することができる教育関連施設を考える問題
特別支援教育
支援のための構造化の考え方を踏まえた対応の例を検討する問題
障害のある子ども
就学前や入学後などの場面において、教育的ニーズと必要な支援内容を整理し、関係機関と共有するために作成される文書について考える問題
福祉分野に関する出題
〖出題例〗
社会福祉
社会福祉六法に含まれる法律について考える問題
児童福祉法
児童福祉法における「児童」の定義について選ぶ問題
福祉制度
我が国の福祉制度において、行政機関による措置に基づいて提供されるものを選ぶ問題
高齢者
高齢者虐待に関して、地域包括支援センターが担う役割を考える問題
介護
要介護認定で「自立」と判定された者が利用できる高齢者サービスに該当するものを選ぶ問題
医療分野に関する出題
〖出題例〗
精神科
精神科リエゾンチーム加算において、公認心理師の他のチーム構成要件を満たす職種を考える問題
うつ病
うつ病が疑われる児童の症状評価のために用いる心理検査として適切なものを考える問題
喫煙
喫煙習慣を背景に中高年で発症し、運動時の息切れが主症状であり、うつ病の併存が多い疾患について考える問題
脳波
脳波検査において、棘波(スパイク)が出現した場合に考えられる病態について考える問題
司法分野に関する問題
〖出題例〗
保護観察所
保護観察所と連携し、更生保護を支え、非行のある少年に身近な存在として接し、話し相手になり学習支援などを通じて、少年の立ち直りを支援するボランティア活動を行う人又は団体を表す用語を考える問題
少年院
少年院において、少年に対する生活指導を担当する職種を選ぶ問題
司法面接
子どもの司法面接を行う際の留意点を考える問題
少年法の改正
2021年に改正された少年法によって、18歳及び19歳の少年について、原則検察送致とする対象事件が拡大されるなど、他の年齢の少年と一部異なる取扱いをする特例が定められたことについて考える問題
刑事裁判
刑事裁判で拘禁刑以上の刑を受けた、主に16歳未満の少年を収容する少年院について考える問題
産業分野に関する問題
〖出題例〗
労働
労働基準法に規定されている内容について考える問題
経営
経営環境の変化に適応していくための組織変革に不可欠とされる、変革型リーダーシップの構成要素について考える問題
休職者の復職
休職者の復職のためにリワークプログラムを実施している公的機関について検討する問題
ストレスチェック
労働安全衛生法に規定されたストレスチェック制度において、厚生労働大臣が定める研修を修了した場合に、その実施者になることができる職種について考える問題
事例問題
〖出題例〗
登校しぶりがある小学4年生
腹痛や頭痛があり、食べ物全般へ拒否感が出現し、食事の量が減少し、体重も低下している病態について考える問題
選択肢:うつ病、強迫症、社交不安症、神経性やせ症、回避・制限性食物摂取障害
声のトーンや話し方が別人のように急変する大学生
見知らぬカフェで見覚えのない人と話しておりパニックになったり、財布の中に立ち寄った覚えのない店のレシートが入っていたりというような状態の病態について考える問題
選択肢:てんかん、解離性健忘、統合失調症、一過性全健忘、解離性同一性
認知症カフェに通う86歳女性
要介護認定は受けていないが、火をつけたままで鍋を放置したり、財布や鍵を無くしたりすることが少しずつ増えている状況に関して、提案すべきサービスや機関を考える問題
選択肢:特別養護老人ホーム、地域包括支援センター、小規模多機能型居宅介護、訪問リハビリテーション、介護予防通所リハビリテーション
既婚者と知らずに付き合っていた男性から別れを告げられた女性
一方的に別れを告げられた後、SNS に誹謗中傷を投稿し、男性の自宅をつきとめ火を放とうとしたところを発見され、放火未遂の容疑で逮捕・起訴された。取り調べにおいて、恋愛問題で以前にもトラブルがあったことが分かった。この女性に対するテストバッテリーに含めるべき心理検査を選ぶ問題
選択肢:TEG、CAPS、P‐S スタディ、Vineland-2、ベンダー・ゲシュタルト検査
まとめ
医療系の問題、身体の機能に関する問題は、生理学の知識も必要であり、学習に時間がかかる問題も見受けられます。大学院生にとっては授業だけでは難しい部分もあるかもしれません。公認心理師試験向けのテキストなどを使い、必要な部分にしぼって学習しましょう。心理支援、心理検査、臨床場面での対応に関する問題も出題されており、基本的な内容を確実にしっかり学ぶことを意識してください。施設名や法律名については、過去問で出題された用語が繰り返し出題されることも多いので、過去問で出題された用語に関連する内容も学習しましょう。
また、事例問題は病態や心理検査の出題が多くなっていますので、病態や心理検査を中心に取り組んでいきましょう。
