学校で活躍する心理師|スクールカウンセラーのキャリアと現場の課題を解説

スクールカウンセラーとして学校現場で活躍する心理師のイメージ

学校現場で活躍するスクールカウンセラー(以下SC)は、子どものこころの安全を守る専門家として、教育現場に欠かせない存在となっています。公立校・私立校での配置制度や契約の仕組み、現場でのやりがい、実際に心理師が感じる悩み、専門職としての研修制度まで、SCのリアルな姿をここで詳しく紹介します。

公立・私立で異なるスクールカウンセラーの配置

スクールカウンセラーの働き方は、学校の種別によって大きく異なります。

公立学校

公立の小学校・中学校・高校では、多くが「自治体による配置制度」に基づいてSCが配置されています。自治体が心理師(臨床心理士・公認心理師)と契約し、週1〜数日で複数校を担当することが一般的です。

自治体によって

  • 勤務日数
  • 報酬
  • 担当校の数
  • 配置の対象学年(小・中・高)

に差があり、地域差が非常に大きい分野でもあります。

私立学校

私立校では、学校が独自に心理師を雇用するケースが増えています。常勤カウンセラーとして校内に常駐する場合もあり、公立校よりも勤務条件が安定している場合もあります。

私立校は学校の特色に合わせて自由度が高く、

  • いじめ予防プログラムの導入
  • キャリア教育との連携
  • 保護者向け講演会

など、学校独自の取り組みの中心を担うこともあります。

自治体契約の仕組み

公立校のSCの多くは自治体と「委託契約」を結ぶケースが多いです。

多くの場合、

  • 年間契約
  • 1日あたりの勤務時間が決まっている
  • 非常勤扱い

という形で運用されます。

委託契約であるため、雇用保険や社会保険の適用がない場合もあり、安定性という観点では課題も残ります。

しかし、自治体による研修制度が充実していたり、学校現場で専門家として活動できるやりがいは非常に大きく、心理師が経験を積みやすい働き方でもあります。

スクールカウンセラーの主な業務

学校での心理師の活動は多岐にわたります。

生徒面接

子どもの抱える悩みはさまざまです。

  • いじめ
  • 不登校
  • 友人関係のストレス
  • 家庭環境の問題
  • 発達特性への不安

こうした背景を丁寧にアセスメントし、子どもが安心して話せる場をつくることがSCの中心的な役割です。

保護者支援

保護者が子どもの対応に悩むケースは多く、保護者面接も重要な仕事です。「子どもを叱れない」「朝起きられない」「勉強しない」など、家庭の悩みは学校生活にも直結します。SCは家庭と学校の橋渡しとして、保護者支援を行います。

教員との連携

教員は常に多忙で、児童生徒の行動や家庭背景の情報を最もよく把握しています。SCは教員と連携しながら支援計画を立て、担任・学年団と協力して学校全体の支援体制を整えます。

校内会議への参加

いじめ防止対策委員会、ケース会議、教育相談委員会など、校内の意思決定に参画し、心理専門職としての意見を述べます。心理師の視点が加わることで、支援の質が大きく向上します。

スクールカウンセラーのやりがい

学校現場の心理師が語るやりがいとして多いのは、「子どもの変化を近い距離で感じられる」という点です。

相談を重ねるうちに

  • 表情が明るくなる
  • 教室に戻れるようになる
  • 仲間と関われるようになる

など、小さな変化が積み重なる瞬間に立ち会えるのは、教育現場ならではの魅力です。

また、学校というチームの中で支援を作り上げていく過程や、保護者が子どもとの関わり方を変えていく姿に関わることも、大きな達成感につながります。

現場で心理師が抱える悩み

一方で、SCには現実的な課題も存在します。

勤務日数の制限

公立校のSCは週1日もしくは数回の勤務が多く、継続したフォローが難しい場合があります。

多職種連携の難しさ

忙しい教員との連携が十分に取れないと、支援方針の共有が遅れ、生徒支援がスムーズに進まないこともあります。

業務範囲の曖昧さ

「カウンセラーがどこまで関わるべきか」が学校によって異なり、役割が曖昧になりやすい点もあります。

感情的負荷の大きさ

不登校、虐待、いじめなど重い相談が多く、心理師自身のメンタルケアも必要です。

スクールカウンセラーの研修制度

自治体によっては、

  • 年間研修
  • ケース検討会
  • 心理師同士の事例共有
  • 専門家講師による講義

などの研修制度が整えられています。

私立校の場合は校内研修や外部研修参加費の補助がある場合もあり、学校独自の支援体制が整っていることもあります。

研修制度は心理師がスキルを維持し、孤立しがちな学校現場でも質の高い支援を続けられるための重要な支えとなっています。

まとめ|学校で活躍するスクールカウンセラーのキャリアと課題

スクールカウンセラーは、学校に通う子どもたちの心の健康を守る重要な専門家です。公立と私立では配置制度や働き方が大きく異なり、やりがいもあれば課題も存在します。学校というコミュニティの中で、多職種と協力しながら子どもを支援する経験は、心理師としての成長を大きく促す貴重な機会です。

Meg心理師国家試験予備校では、心理師としての知識だけでなく、こうした現場のリアルをふまえたキャリアガイダンスも提供できます。スクールカウンセラーを目指す方の支援も可能ですので、ぜひご相談ください。

 

監修者

【公認心理師】新田 猪三彦(にった いさひこ)

2007年より心理学や脳科学の講座を行い、医歯薬専門予備校で受験に必要なメンタルの強化法、保育士会調査研究委員会において「保育士・保護者のコミュニケーション講座」、市民と協働によるまちづくり提案事業、産学官包括連携事業などを行っている。
九州朝日放送運営のマイベストプロ福岡でコラムの執筆にも携わり、一人でも多くの人が心が豊かに生活できるように情報を発信している。
また、部活動のメンタルトレーニング、学校を中退した学生の受験・学習支援、受験を見守る保護者の相談、資格試験合格のためのモチベーション管理、タイプ別による学習法のアドバイスなども行っている。
<略歴>
公認心理師 /ふくおか成年後見センターさくら / 福岡コミュニケーションカレッジ講師 / PMD医歯薬専門予備校心理カウンセラー / 日本心理学会認定心理士 / 日本メンタルヘルス協会認定基礎心理カウンセラー / 文部科学省所管生涯学習開発財団(神経言語プログラミング)協会認定マスタープラクティショナー / ICA(国際コーチ協会)認定コーチ / カナダSuccess Strategies・Shelle Rose Charvet認定LABプロファイリング・プラクティショナー
・LINEトークCAREカウンセラー
・メンタルゼミ