これまでの公認心理師問題の傾向と第8回(2025年)公認心理師試験問題の予想
公認心理師試験に向けて勉強している人の中には、何から対策すれば良いのか、公認心理師試験はどういう傾向にあるのか悩んでいる人もいるかもしれません。
公認心理師試験合格に向けて、近年の傾向と第8回公認心理師試験問題の予想をしていきます。
第8回公認心理師試験に合格するために、短期間で効果を上げる学習のポイントをお伝えします!
心理学の基本的な用語が出題される
近年の公認心理師試験問題を見ると、選択肢が一問一答のような用語を選ぶ問題が増えています。事例問題もあることから、選択肢が文章になっている問題が全体的に多い印象を受けますが、実際に解いてみると一問一答形式の対策で答えることができる問題も見受けられます。
例えば、第7回公認心理師試験問題において、
【問4】刺激と反応の間の媒介変数として習慣強度を設定し、行動を説明した人物に該当するものを1つ選べ。
① B. F. Skinner
② C. L. Hull
③ E. C. Tolman
④ E. R. Guthrie
⑤ J. B. Watson
【問10】ある1つの刺激に対して生じている反応が、類似したその他の刺激においても同様に生じる現象を説明する概念として、最も適切なものを1つ選べ。
① 馴化
② 消去
③ 般化
④ 負の強化
⑤ 高次条件づけ
自らの感情を認知したり表現したりすることが乏しく想像力に欠ける状態を意味する用語や、R. Rosenthal が示した教師が持つ学習者に対する期待によって結果的に当該学習者の成績が向上するとされる現象を説明する用語を選ぶ問題も出題されています。
ひとつの用語について深く知る必要はありませんが、用語のつながりや、心理学の知識を幅広く知っておく必要があります。大学院入試のように記述があるわけではないので、広く浅く学習する形で構わないので、心理学の用語を増やしておくことが大切です。
マニアックな心理用語を覚えるのではなく、心理用語の基本的な意味を理解しましょう。第8回公認心理師試験問題においても、基本的な心理用語の出題が予想されますので、確実に得点できるように、繰り返し学習していきましょう。
心理検査に関する問題が出題される
心理検査は必ず出題されますが、心理検査は多様ですべてを完璧に覚えることは、受験生にとっては難しいと思います。心理検査は過去問で数回出題されたものは、第8回公認心理師試験でも出題される可能性が高いので、WISC、CAPS など複数回出題されている検査から覚えていきましょう。心理検査が何を意味しているのか、どの検査が何を表すのかを把握することが大切です。
例えば、第7回公認心理師試験問題において、
【問92】注意欠如多動症/注意欠如多動性障害〈AD/HD〉のアセスメントを行うための心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① ADOS
② Conners 3
③ M-CHAT
④ PARS
⑤ WISC-V
【問139】21歳の女性A、両親と同居中。アルバイトが長続きせず、家に閉じこもっていることを心配した親に連れられて、精神科クリニックを受診した。Aによると、小学生の頃から人前で話すのが苦手で、中学、高校でも、人から見られていると思うと強い不安を感じ、学校も休みがちであった。アルバイトでは、他の従業員が集まっているスタッフルームに後から入るときや、昼休みの雑談のときなどに特に緊張が高まって、欠勤してしまうことが増え、アルバイトを辞めてしまうことを繰り返していたという。Aの病態評価のために行う心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① CARS
② LSAS-J
③ PDSS
④ POMS
⑤ SDS
心理検査の問題において、以前は「〇〇点以上だと△△」「〇〇点以下だと△△」というような具体的な数値、カットオフ値に関する問題、対象年齢について問われる問題もあったが、近年はあまり出題されていない。
第8回公認心理師試験問題は、細かい数値よりも、クライアントの状況を考えて、適切な心理検査を選ぶ問題が増えると予想しています。
病態に関する問題が出題される
公認心理師を目指している人は、心理学の用語を中心に勉強しているケースが多いと思いますが、病態に関する問題もよく出題されています。症状を単純に暗記するだけでなく、その症状がどのような特徴をもっているのかを理解することが大切です。
例えば、第7回公認心理師試験問題において、
【問129】DSM-5 における抑うつエピソードの主要な症状に該当するものを2つ選べ。
① 注意散漫
② 無価値感
③ 自尊心の肥大
④ 現実感消失又は離人感
⑤ 興味又は喜びの著しい減退
【問143】9歳の男児A、小学3年生。母親BがAの家庭や学校の様子を心配に思い、スクールカウンセラーに相談した。Bによると、Aは、幼少時から全般的な発達に遅れはなかった。しかし、熱心に取り組もうとはするものの、一人で着替えるのに時間がかかり、箸やスプーンを使うことも苦手である。縄跳びや自転車に乗ることがうまくできない。また、書字では、マス目に沿って書くことができなかったり、力を入れすぎてノートを破ったりするため、学校生活に支障が出始めている。DSM-5 に基づくAの病態の理解として、最も適切なものを1つ選べ。
① 脱抑制型対人交流障害
② 常同運動症/常同運動障害
③ 反抗挑発症/反抗挑戦性障害
④ トゥレット症/トゥレット障害
⑤ 発達性協調運動症/発達性協調運動障害
うつ病や発達障害と関係する症状について考える問題の出題頻度は高い傾向にあります。特に症状に関連した事例問題が出題されることも多く、事例と病態を関係づけておくことが大切です。
うつ病や発達障害だけでなく、統合失調症、心的外傷後ストレス障害などこれまで出題さている内容は、第8回公認心理師試験問題でも出題される可能性が高いので、理解を深めておきましょう。
心理学との関連が薄い問題も出題される
例年、一見すると心理学とは、あまり関係がなく、大学院などでもあまり扱われていないような問題が出題されることがあります。
例えば、第7回公認心理師試験問題において、
【問100】子どもに多くみられ、細菌が原因で起こる感染症として、正しいものを1つ選べ。
① 風疹
② とびひ
③ はしか
④ 手足口病
⑤ 水ぼうそう
医学的な知識を持っている受験生や病院での実習などで学んだ受験生であれば解けたかもしれませんが、多くの受験生は難しいと感じたのではないでしょうか。
【問120】2018年(平成3年)に成立した、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律〈働き方改革関連法〉で規定された事項に該当しないものを1つ選べ。
① 健康経営の推進
② 時間外労働の上限規制
③ 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
④ 長時間労働者への産業医等による面接指導の強化
⑤ 個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方がしやすい環境整備
産業分野に従事する公認心理師にとっては重要な部分ではありますが、法律に関する細かい知識が必要で、受験生にとっては難しく感じたのではないでしょうか。
他にも、酸素との結合の有無によってヘモグロビンの磁化率が変化することに基づき脳活動を評価する手法、少年事件の調査における家庭裁判所調査官の業務に該当するものなど、「え!?こんな問題がでるの?」と驚くような問題が出題されます。
ただ、合格のボーダーラインを考えたときに、3割程度は捨てても良い問題なので、細かい知識にとらわれず、心理学の基礎的な学習を進めていきましょう。
第8回公認心理師試験問題においても、受験生が驚くような問題が出題されるかもしれませんが、そのような問題に惑わされず、基本的な問題を確実に解いていきましょう。
まとめ
心理学と関係の薄い問題も一部出題される可能性がありますが、まずは基本的な心理学の用語を理解することから学習を進めるようにしてください。
そのうえで、心理検査を実際にどのような場面で使うのか、発達障害やうつ病はどういう状態なのか、心理職が働くうえで大切な法律はどのようなものなのかを考える学習スタイルで学びを深めるようにしましょう。
公認心理師試験まで時間も少ないので、少しでも効率的に学習を進めてもらえればと思います。
【公認心理師】新田 猪三彦(にった いさひこ)
2007年より心理学や脳科学の講座を行い、医歯薬専門予備校で受験に必要なメンタルの強化法、保育士会調査研究委員会において「保育士・保護者のコミュニケーション講座」、市民と協働によるまちづくり提案事業、産学官包括連携事業などを行っている。
九州朝日放送運営のマイベストプロ福岡でコラムの執筆にも携わり、一人でも多くの人が心が豊かに生活できるように情報を発信している。
また、部活動のメンタルトレーニング、学校を中退した学生の受験・学習支援、受験を見守る保護者の相談、資格試験合格のためのモチベーション管理、タイプ別による学習法のアドバイスなども行っている。
<略歴>
公認心理師 /ふくおか成年後見センターさくら / 福岡コミュニケーションカレッジ講師 / PMD医歯薬専門予備校心理カウンセラー / 日本心理学会認定心理士 / 日本メンタルヘルス協会認定基礎心理カウンセラー / 文部科学省所管生涯学習開発財団(神経言語プログラミング)協会認定マスタープラクティショナー / ICA(国際コーチ協会)認定コーチ / カナダSuccess Strategies・Shelle Rose Charvet認定LABプロファイリング・プラクティショナー
・LINEトークCAREカウンセラー
・メンタルゼミ