【2025年】第8回公認心理師国家試験総評|難易度・傾向・対策

厚生労働省|公認心理師について

国家試験総評 第8回公認心理師試験解説

第8回公認心理師試験では、これまで以上に心理支援の実践力や幅広い知識を問う問題が多くあり、難しいと感じた受験生も多かったのではないでしょうか。

 

かつての公認心理師試験の問題では、常識で解答することができた事例問題もありましたが、近年はきちんとした心理学の知識、専門職としての知識が問われることが多く、正解の選択肢を選ぶときに迷った受験生もいたかと思います。

 

今回はこれまでの過去問と第8回公認心理師試験問題を比較しながら、今後の試験対策を考えていきます。

 

まずは、これから公認心理師試験を受ける人に向けて、公認心理師試験の概要から説明していきます。

 

国試対策コース

 

公認心理師試験の概要

試験日

3月上旬頃

※第7回公認心理師試験から日程が3月上旬になりました。

 

試験時間

午前の部(10:00~12:00)・午後の部(13:30~15:30)

 

問題数

午前の部/一般問題(58題)/事例問題(19題)/合計(77題)
午後の部/一般問題(58題)/事例問題(19題)/合計(77題)
午前・午後の合計/一般問題(116題)/事例問題(38題)/合計(154題)

 

配点

一般問題(各1点)/問題数(116題)/合計得点(116点)
事例問題(各3点)/問題数(38題)/合計得点(114点)
総得点(230点)

 

合格基準

総得点(230点)の60%程度以上を基準とし、問題の難易度で補正するという考え方を基に決定

※例年、138/230(60%)になることが多いが、第8回公認心理師試験は134/230(58%)となった。例年より問題の難易度が上がったことを考慮し、合格基準の得点に変化があったものと思われます。

 

試験形式

全問マーク式

 

試験地

東京都 大阪府

※第1回~第5回公認心理師試験までは7都道府県〜11都道府県で実施されていましたが、第6回公認心理師試験からは東京都と大阪府のみになっているので、地方受験者は注意が必要です。

 

第8回公認心理師試験の傾向

【1】医学分野に関する問題について細かい知識が問われる

例年、医学的な知識を問う問題が出題され、生理学の知識が必要な問題も出題があり、難しいと感じた受験生も多かったのではないでしょうか。

 

これまでの公認心理師試験においても、医学的な知識、医療分野の出題はあり、第7回公認心理師試験と同様に、心理学を中心に学習してきた受験生には難しい内容だったと思われます。

 

〖例題〗

第7回公認心理師試験 (問28)

老廃物の排出や体液量の調整、酸塩基平衡の維持などに関わる臓器として、最も適切なものを1つ選べ

① 胃
② 肺
③ 肝臓
④ 結腸
⑤ 腎臓

第7回公認心理師試験(問88)

自律神経の節前線維から放出される神経伝達物質として、適切なものを1つ選べ。

① セロトニン
② ドーパミン
③ グルタミン酸
④ アセチルコリン
⑤ ノルアドレナリン

第7回公認心理師試験(問100)

子どもに多くみられ、細菌が原因で起こる感染症として、正しいものを1つ選べ。

① 風疹
② とびひ
③ はしか
④ 手足口病
⑤ 水ぼうそう

第8回公認心理師試験(問34)

プリン体の代謝産物であり、痛風の発症に関わる物質として、正しいものを1つ選べ。

① 乳酸
② 尿酸
③ クエン酸
④ コハク酸
⑤ ピルビン酸

第8回公認心理師試験(問89)

小脳の機能として、最も適切なものを1つ選べ。

① 呼吸の調節
② 性欲の制御
③ 意識水準の維持
④ 体性感覚の中継
⑤ 手続き記憶の保持

第8回公認心理師試験(問104)

肝臓で毒性が低い尿素に変換される物質として、正しいものを1つ選べ。

① アンモニア
② グルコース
③ グリコーゲン
④ コレステロール
⑤ アセトアルデヒド

 

第7回公認心理師試験問題、第8回公認心理師試験を比較すると、例年同じような生物の知識や基礎的な医学の知識が問われます。

 

生物の知識や医学の知識がある人にとっては、難しくないかもしれないが、高校や大学において生物などの科目に触れていない受験生には難しい問題だと思われます。

 

公認心理師試験の出題範囲にも、「人体の構造と機能及び疾病」の記載があり、今後も出題される可能性が高いです。

 

そのため、「例年難しい問題が出題されるので、医療系の問題は捨てよう」などと考えずに、生物の知識や基礎的な医学の知識についても学習を進めることが大切です。

 

【2】心理支援における心理技法の出題が増加

第8回公認心理師試験の問題を見ると、実践の現場で公認心理師がどのよう知識を持って、どのようなスキルを使っていくのか現場の対応力を考える問題が増加していました。

 

事例問題だけでなく、一般問題においても、具体的な技法について、答える問題が出題されており、介入方法なども含めて、深い内容の問題もありました。

〖例題〗

第8回公認心理師試験(問18)

クライエントが抱えている重要な他者との問題を、4つの問題領域のいずれかに相当するかを同定した上で、それぞれの治療戦略によって解決を図る方法として、最も適切なものを1つ選べ。

① 内観療法
② 森田療法
③ スキーマ療法
④ 対人関係療法
⑤ 問題解決療法

第8回公認心理師試験(問29)

注意欠如多動症/注意欠如多動性障害〈AD/HD〉のある児童で、授業への集中に困難が認められるケースの支援として、最も適切なものを1つ選べ。

① 実物や模型に触る機会を多く設ける。
② トークン・エコノミーを取り入れる。
③ 教室前方の黒板周囲の掲示物を減らす。
④ 事前の指示によって活動の見通しをもたせる。
⑤ ソーシャル・スキルズ・トレーニング〈SST〉を行う。

第8回公認心理師試験(問151)

32歳の女性A、入職1年目の介護職員。

Aは、不眠と気分の落ち込みを訴え、精神科の外来を受診した。

Aによると、2か月前、通所者Bの送迎車を運転中、追突事故に巻き込まれた。

Aは軽い頸椎捻挫で済んだが、同乗していたBは、骨盤骨折などの重傷を負い、現在も入院中である。

Aは事故後も勤務を続けているが、当時のことがふと思い出されたり、突然動悸がしたりする。

Bの怪我の原因は全て自分にあると感じ、自責の念が強い。

事故の悪夢に悩まされることもある。

以前は、仕事が楽しかったが、事故以来、送迎車の運転に恐怖を感じ、仕事を辞めたいという。

Aの治療に有効と考えられる、構造化された心理療法に該当するものを2つ選べ。

① 応用行動分析〈ABA〉
② 問題解決療法〈PST〉
③ 持続エクスポージャー法〈PE〉
④ 眼球運動による脱感作と再処理法〈EMDR〉
⑤ 緊急事態ストレス・デブリーフィング〈CISD〉

 

第8回公認心理師試験の問題の選択肢に注目してもらうと、過去の公認心理師試験で出題された用語があることに気づいた人もいるのではないでしょうか。

 

全く同じ問題が出題されたことはありませんが、過去問で出題された選択肢の用語が、別の年度で出題されるケースもあります。

 

過去問の学習を進める中で、正誤の判断だけでなく、選択肢として出てきた心理技法についても学習を深めてもらえればと考えています。

 

【3】施設や法律は過去問に類似した問題が出題

第8回公認心理師試験においても、施設や法律の特徴などの問題は心理師を目指す受験生には少し難しいと感じる内容だったのではないでしょうか。

 

施設や法律の特徴は覚える量が多く、全て完璧に覚えることは難しいと思われます。

 

ただ、公認心理師試験の場合、過去問で出題された施設や法律が再度出題されることもあります。

〖例題〗

第8回公認心理師試験(問2)

保護者のない児童、虐待されている児童などに対して安定した生活環境を整えるとともに、生活指導、学習指導、職業指導及び家庭環境の調整を行いつつ児童を養育することにより、児童の心身の健やかな成長とその自立を支援することを目的とする施設として、最も適切なものを1つ選べ。

① 児童相談所
② 児童厚生施設
③ 児童養護施設
④ 児童家庭支援センター
⑤ 児童発達支援センター

第7回公認心理師試験(問153)

11 歳の男児A、小学 5 年生。

Aは、親の経済的困難のため、2歳のときに地域小規模児童養護施設に入所した。

両親は、Aの入所後しばらくは面会に来ていたが、最近連絡が途絶えている。

ある日、施設の公認心理師Bは、Aの担当ケアワーカーCから相談を受けた。

Cによると、Aは元来穏やかな性格であるが、最近、親との記念写真を捨ててしまったり、居間でAが得意とする工作をしているときに、年少児に作品を壊されたと激怒したりと、情緒不安定な様子がみられる。

あるとき、CがAに自室で作るよう言うと、「ここは僕の家だ。どこでも好きな所で作る権利が僕にはある」と泣いて主張した。

BとCの対応として、適切なものを2つ選べ。

① 集団生活のルールをAと一緒に考える。
② トラウマに焦点づけた認知行動療法を導入する。
③ 児童相談所に対して、一時保護の措置を依頼する。
④ Conners 3 を実施して、その結果を基に支援計画を作成する。
⑤ Aの両親の現状と今後の見込みについて、児童相談所に確認し、Aへの伝え方を検討する。

第6回公認心理師試験(問114)

児童相談所における相談援助活動に関連する内容として、適切なものを1つ選べ。

① 一時保護は、一時保護所のみで行われる。
② 児童福祉審議会は、児童相談所の人材育成のための研修を実施する。
③ 措置制度では、利用者がサービス提供者と対等な立場に立って契約を結ぶ。
④ 援助方針会議は、子どもや保護者等に対する最も効果的な援助指針を作成、確認する。
⑤ 社会診断は、日常生活に近い条件の下で、子どもに対する 24 時間の直接観察に基づいて行われる。

 

第8回公認心理師試験、第7回公認心理師試験、第6回公認心理師試験をそれぞれ読むと、「児童相談所」とキーワードがどれも含まれています。

 

このように毎年のように出題されている施設や法律があります。

 

他にも、労働基準法、障害者差別解消法などの出題もあります。

 

基本的な内容を問う問題が多いので、過去問で出題された用語はきちんとし覚えることも重要です。

 

まとめ

医療系の問題は生物の基礎知識が必要な問題もあり、学習に時間がかかるものもあるが、基本的な内容の問題もあるので、あきらめずに学習を進めましょう。

 

心理支援における心理技法の出題が増えているので、現場でどのようなスキルが求められるかも含めて、心理技法は確実にしっかり学ぶことを意識してください。

 

施設や法律については、過去問で出題された用語が繰り返し出題されることが多いので、過去問で出題されたものを中心に学ぶことが大切です。

国試対策コース

 

 


 

プロフィール

【公認心理師】新田 猪三彦(にった いさひこ)

2007年より心理学や脳科学の講座を行い、医歯薬専門予備校で受験に必要なメンタルの強化法、保育士会調査研究委員会において「保育士・保護者のコミュニケーション講座」、市民と協働によるまちづくり提案事業、産学官包括連携事業などを行っている。
九州朝日放送運営のマイベストプロ福岡でコラムの執筆にも携わり、一人でも多くの人が心が豊かに生活できるように情報を発信している。
また、部活動のメンタルトレーニング、学校を中退した学生の受験・学習支援、受験を見守る保護者の相談、資格試験合格のためのモチベーション管理、タイプ別による学習法のアドバイスなども行っている。
<略歴>
公認心理師 /ふくおか成年後見センターさくら / 福岡コミュニケーションカレッジ講師 / PMD医歯薬専門予備校心理カウンセラー / 日本心理学会認定心理士 / 日本メンタルヘルス協会認定基礎心理カウンセラー / 文部科学省所管生涯学習開発財団(神経言語プログラミング)協会認定マスタープラクティショナー / ICA(国際コーチ協会)認定コーチ / カナダSuccess Strategies・Shelle Rose Charvet認定LABプロファイリング・プラクティショナー
・LINEトークCAREカウンセラー
・メンタルゼミ